2026年度学部基礎「政治思想」


[授業科目の概要]

この講義では、近代ヨーロッパの政治思想史と現代の政治理論を体系的に学習し、現代世界の法・政治制度を支える基本原理について理解を深めることを目指します。さらに、今日それらがどのような限界に直面し、どのような問い直しを迫られているかを検討することで、一人一人が自分の思想を鍛えるための材料を提供します。

近年急速に発展しているAIを補助的に活用しつつ、自ら規範的・理論的問題について探究を深めるための方法を実験的に模索します。

[到達目標]

(1)政治思想・政治理論の古典に直接取り組む経験を積むこと。

(2)近代の自由民主主義の基本原理を理解したうえで、それらが今日直面している課題を説明できるようになること。

(3)今日の政治や社会にみられる具体的な課題を、国家と市場、平等と公正、普遍性と多元性、自由と権力などの抽象的な概念を使いながら分析でき、かつ自分の立場を論理的に展開できるようになること。

(4)AIを補助的に活用しつつ、規範的・理論的問題について深く考えるための方法を学ぶこと。

[他の授業との関連]

学部2年生以上の基礎科目に相当します。「政治学」とともに履修することで、理論と実証という政治学の主要なアプローチを学ぶことができます。ただし、他の講義を受けていなくとも理解できるよう配慮します。

[授業の内容]

オンデマンドの授業とします。講義のレジュメとビデオはgoogle classroomを通じて配信します。

@オリエンテーション(授業の進め方;政治思想史の方法)

第1部 近代の政治思想

A主権の誕生(ホッブズ、シュミット)
B近代の自由主義(ロック、スミス)
C近代の民主主義(ルソー、カント)
D自由主義への批判(ヘーゲル、マルクス)
E民主主義への懐疑(トクヴィル、シュンペーター)

第2部 現代の政治理論

F全体主義の経験(シュミット、アレント)
Gリベラリズムの再構成@―新自由主義(バーリン、フリードマン、ハイエク)
Hリベラリズムの再構成A―ロールズの正義論(ロールズ、運の平等論、民主的平等論)
I普遍性と差異@(コミュニタリアニズムと多文化主義)
J普遍性と差異A(フェミニズム)
K現代のデモクラシー論(熟議民主主義、闘技民主主義)
Lグローバル正義論;講義のまとめ

[テキスト]

リーディング・アサインメントとして政治思想の古典を抜粋したPDFを用意します。

ホッブズ『リヴァイアサン』
ロック『統治二論』
スミス『国富論』『道徳感情論』
ルソー『人間不平等起源論』『社会契約論』
カント『道徳形而上学原論』『永遠平和のために』
ヘーゲル『法哲学要綱』
マルクス『ヘーゲル法哲学批判序説』『ドイツ・イデオロギー』『資本論』
トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』
シュミット『政治的なものの概念』
アレント『全体主義の起源』『人間の条件』
バーリン『二つの自由論』
フリードマン『資本主義と自由』
ハイエク『自由人の経済的秩序』
ロールズ『正義論』『万民の法』
サンデル『自由主義と正義の限界』
テイラー『自我の起源』
マッキンタイア『美徳なき時代』
セン『不平等の再検討』
オーキン『正義・ジェンダー・家族』
ハバーマス『公共性の構造転換』『事実性と妥当性』
ムフ『政治的なるものの再興』『民主主義の逆説』

講義を理解する助けとなる参考図書として以下を挙げておきます。

福田歓一『政治学史』東京大学出版会、1985年
川崎修・杉田敦編『新版 現代政治理論』有斐閣アルマ、2012年
田中拓道『自由民主主義とは何か』ちくま新書、2026年

その他の推奨文献は、講義の最初に配布します。

[授業時間外の学修]

・リーディング・アサインメントに目を通したうえで、授業のビデオを視聴してください。

・毎回の授業の最後に、内容に関連する質問事項を用意します。以下の手順でgoogle classroomにコメントを提出してください(200字以上)。
 (1)AIと対話を重ね、AIが導いた結論を要約。
 (2)それに対する自分の考えや批判を提示。

[成績評価の方法と基準]

(1)毎回のコメント(不定期で6回×10点)
コメントは、毎回の授業内容を踏まえ、AIを補助的に活用しつつも、最終的に自らの意見を形成したかどうかを重視します。AIに全面的に依拠したコメントには加点しません。

(2)学期末レポート(40点)
特定の思想家を選び、AIを用いてその思想に関する研究上の論争点や対立点を調査したうえで、自分で一次テクストを読解し、論争点に関する自らの考えを論文形式でまとめていただきます。詳しい進め方は授業内で説明します(3000字以上)。なお、学期末レポート提出は単位取得の条件です。

以上で60点以上を可の目安とし、単位取得者の1/3がA、Aの1/3がA+となるよう相対評価とします。

[受講生に対するメッセージ]

・現実の政治問題と抽象概念や規範を往復し、現代の諸課題を思想的・理論的に分析できるようになることを目指します。

・オンデマンドの講義ですが、学生のコメントに対して教員がフィードバックを行い、双方向となるよう工夫します。

・AIは今後の社会にとって不可欠のツールとなります。一方、規範的問題について人間自身が考えることがますます重要になります。この授業では、実験的にAIの活用を組み込み、学生がAIを補助的に活用しつつも自ら思考を深められるよう工夫します。